シルビオ・ゲゼルの「自由通貨」 マイナス金利時代に国家が発行する仮想通貨を考える

未来を予想するなら、過去の歴史から多くの事を学ぶ事が出来ます。実はビットコインのようなコミュニティー内で利用出来る通貨は、遥か昔から存在しています。

それは地域通貨と呼ばれ、1929年にウォール街を起点として起きた世界大恐慌の時に、オーストラリアのヴェルグルやドイツのシュヴァーネンキルヘンの成功例に習い、現在の仮想通貨以上のブームが世界各地で起きました。米国だけでも約4千種類の地域通貨が発行され、中でも大きく成功したのは2種類でしたが、いずれも国家の貨幣システムを乱すとの理由で最終的に禁止されました。

しかも、この当時の地域通貨の概念は、現在のビットコインとは比較にならない程優れたものでした。日本でも1999年にNHKで『エンデの遺言「根源からお金を問うこと」』が放送された事で話題となりました。

貨幣が持つ4つの機能

エンデは現在の「貨幣システム」をテーマに、環境、貧困、戦争、精神の荒廃の根源にお金の問題が大きく影響していると考えました。つまり「パン屋でパンを買う購入代金としてのお金と、株式取引所で扱われる資本としてのお金は、本来2つはまったく異なった種類のお金であるのに共通して扱われる事に問題がある」としたのです。

エンデ曰く「貨幣」の機能は、大きく分類すると4つに分けられると言います。

  1. 交換の手段
  2. 価値の尺度
  3. 価値の貯蔵
  4. 資本・投機のお金

ブレトンウッズ体制までゴールドとの交換が保証されていたお金は、現在は裏付けの無いただの数字です。そして銀行による預けられたお金を担保に、その何倍ものお金を貸し出す「信用創造」の仕組みが、時に経済を混乱させる原因になっています。エンデは上記のうち1~3は本来的に貨幣が持っている機能ですが、4も混同されている為、必然的に問題が起こると考えました。

本来異なる種類のお金であり、貨幣を実際の労働や物的価値の代償として取り戻すために、エンデは現在の貨幣システムの何を変えるべきなのかと真剣に考えたのです。この問いに対し、シルビオ・ゲゼルの「自由貨幣」を探り、法定通貨の代替としての地域通貨「イサカアワー」「交換リング」などについてリサーチします。

ゲゼルが目指す国家が管理する新たな通貨制度とは?

ゲゼルは第一次世界大戦前後に活躍したドイツの実業家であり経済学者です。日本では地域通貨と関連づけられてますが、ゲゼル自身は地域通貨には反対し、国家が責任を持って管理しインフレもデフレもない通貨制度を理想としました。経済学者のケインズも彼の思想に関して「将来の人々はマルクスの精神よりもゲゼルの精神からより多くのものを学ぶであろうと私は信ずる」と評しています。


彼は、貨幣を他の物質や製品と同様、時間とともに「減価」する「自由貨幣」「スタンプ貨幣」というシステムを考案します。

世の中に存在する財やサービスは時間が経てば劣化します(原価償却)。しかし貨幣だけが、貯蔵したとしても「金利」を手にし、価値が減るどころか増える事に異論を唱えたのです。なぜなら巨額の貨幣を持っている者だけが、金利だけで生活する事が可能であり、逆に債務者は金利の支払いに追われ、これが貧富の差が拡大する原因になっています。 オーストリアのヴェルグルでは、世界大恐慌時に国家の本位通貨とは別に、代替通貨としてのこの自由通貨・スタンプ通貨制度を導入しました。


具体的には、公共事業の給与の半分をスタンプ通貨「労働証明書」で支払います。受け取った人は、月に1度額面の1%分のスタンプを購入しなければ利用出来ません。その為にこの貨幣を受け取った人々はオーストリア貨幣よりも優先して利用するようになり、スタンプ通貨の流通が高まり、不況で停滞していたヴェルグル経済の高い失業率は解消される結果となりました。


この「ヴェルグルの奇跡」は世界中の経済学者達から注目を浴びました。しかしオーストリアの中央銀行は通貨発行権を侵害されたとして、この取り組みを妨害します。結局このスタンプ通貨の禁止によって、完全雇用に近かったヴェルグルは再び30%近い失業率に逆戻りします。


この自由通貨のポイントは、貨幣を減価させることで貯蔵させるのではなく流通させる方向へ持って行く点にあります。 つまりこれは現在日本も含む世界30カ国以上に導入されている、マイナス金利の概念と類似するものです。ヴェルグルの事例と異なるのは、国家の本位通貨と併用してその一部に自由貨幣が導入された点であると言えます。しかし、現在世界の中央銀行はゴールドを備蓄しつつもブロックチェーンを基に新たな仮想通貨の研究を行っています。


今はまさに資本主義から人工知能やロボット、DACなどのテクノロジー時代への変わり目と言えるのですが、このケインズも称賛したゲゼルの精神は、国家によるブロッチェーンを活用した新たな通貨制度の構築に、大きな影響を与えるものなのかも知れません。

エンデの遺言 ~根源からお金を問う~「NHKエンタープライズ21」(1999.5.4)
続エンデの遺言:2部作 坂本龍一 銀行の”未来”「NHKエンタープライズ21」(2001.10.19)

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