「死んだ資本」に蓄えられた富を開放する BitlandのビジネスモデルとCadastralの役割 

このブログでは、「IMF」と「世界銀行」が、世界で重要な役割を担っている事を学びました。Bitlandは、ガーナでその世界銀行と、土地委員会が進める土地管理プロジェクトで働いており、その活動は「世界経済フォーラム」でも紹介されています。

最近では、アフリカのIT系専門サイトでも、注目すべき5つのブロックチェーン企業の1社として取り上げられ、不動産取引をブロックチェーンに利用する為の国際標準化案を決定する、ISO規格技術(ISO / TC307)の定義の支援にも取り組んでいます。CSOのLarry C. Bates氏は、「MIT Sloan School of Management」のゲストスピーカーとして呼ばれるなど、一歩一歩ではあるものの、確実に国際的な注目度はあがっているようです。

5 African Blockchain Companies to watch「IT NEWS AFRICA」(2017.2.21)
“Bitland and Ubitquity LLC contributing to terminology database for ISO/TC307 on Blockchain and Distributed Ledgers”(2017.3.30)

しかし、このBitlandのトークンであるCadastralが、まったく市場で評価をされていません。時価総額に至っては10万ドル規模です。

このプロジェクトは、ペルーの経済学者Hernando de Soto氏の『資本の謎』の理論に基づき、法的に認められていない土地をブロックチェーンに登録し、「死んだ資本」に蓄えられた富を開放する事に焦点を当てています。その規模は、家や車その他の資産を含めれば、世界で約20兆ドルにも及ぶと言います。

時価総額が低迷している原因は、ICOの失敗です。当初このプロジェクトの3年間の予算は、800万ドル規模でしたが、ICOはプロジェクトを長期的に支援する事を出来ず、売れ残ったトークンは全て市場で売却されました。(オラクルの費用300万を除く)現在はICOとは全く関係のない、個人的支援で成り立っていると言います。

多くの投資家が不安を持つ中で、Larry C. Bates氏は『Cadastralは、不動産投資信託(Real Estate Investment Trust:REIT)であり、私達のプロトコルの中核である。そして、いずれ会社が利益をあげれば市場から買い戻す』とsteemitで発言しています。

それでは一体、どうやって収益をあげるのでしょうか?オリジナルリサーチを提供するSMITH + CROWNというサイトで、Bitlandの具体的なビジネスモデルが紹介されていました。

このビジネスモデルを理解すれば、トークンの売却意図も理解する事が出来ます。今日はこれをベースに、まとめてみようと思います。なお、正確な内容は原文を確認して頂く事をお勧めします。記事の内容は、『決して投資のアドバイスや推薦をしている訳ではない』としています。

Bitland Initial Coin Offering (ICO): A Review「SMITH + CROWN」(2016.4.28)

Bitlandの強みはNGOを活用したオペレーションシステム

Bitlandは、ガーナでブロックチェーンベースの土地登記簿を作成する為の取り組みです。世界中の多くの国では、土地の所有者の記録が不十分で、土地の売却や借入など、法的に経済の発展に重要な、土地の資産を否定しています。ブロックチェーンによる不変な土地登録は、存在しないマーケットを創出する可能性があります。

つまりBitlandは『無から価値を生み出すプロジェクト』と言えます。

このプロジェクトは、ホンジャラスでのFactom(2015年12月に停止)や、最近発表されたジョージア(グルジア)共和国のBitfuryの取り組みに似ています。Bitlandの最初の取り組みは、ガーナのNGO Bitland Ghanのパイロットプロジェクトになります。ICOの時点で、すでに28の地域で共同プロジェクトが開始されており、このパイロットプロジェクトが成功した後、アフリカ大陸を中心とする他の国々にも拡大される予定です。

彼らは言います。Bitfuryのジョージア共和国の土地登記は上手くいくかもしれません。しかし、規模の拡大には役立ちません。そしてアフリカでは決して上手くいかないでしょう。実際、Bitfuryのプロジェクトは、まだ20件程度の土地登記しか行われていないようです。しかし、昨年Bitlandはガーナだけで500件の土地登記を完了し、さらに5ヵ国でライセンスを取得しています。組織が拡大するにつれて、各国の多様な文化を尊重するように配慮しているそうです。

Bitlandは過去2年間に渡り、土地登記に関する広報活動を行ってきました。当初この活動の目的は、土地情報をデジタル化に置き換える事であり、必ずしもブロックチェーンに焦点を絞ったものではありませんでした。業界におけるBitlandの強みは、ブロックチェーンのテクノロジーというより、このNGOの構築や、コミュニティーの統率能力、測量も含めたオペレーションシステムなどのノウハウであると言えそうです。

Bitlandの収益は、NGOによる補助金や慈善活動資金

Bitlands Globalの究極のビジネスモデルは、Bitlands GlobalというLLC(有限責任会社)が、土地登録の為のブロックチェーンと、デジタル通貨Cadastralsを管理する事です。

Bitland Global」は、LLCとして、公的、私的、および慈善活動資金を活用します。それは、土地市場を構築するのに役立つ、多くの関連するNGOを持つ事を意味し、「Bitland Ghana」が最初になります。プロジェクトは、地元のNGOとして契約を締結する事により、補助金の対象となるだけでなく、追加の国際レベルの精査を行う事が可能になります。

ブロックチェーン・レボレーション」によれば、1990年代半ば以降Factomと進めていたホンジャラスでは、土地管理・開発プロジェクトの為に、世界銀行や国際的なNGOから1億2530万ドルの支援と技術援助を受けていたそうです。

暗号通貨Cadastralの名前の由来は、土地区間の境界と所有権を表す、Cadastral mapsから来ています。この2つのブロックチェーンは別々になっており、ブロックチェーンは、Codastralのトランザクションに基づいての変更が行われ、両方ともBitland Globalによって管理されます。

法的に登録されたLLCとNGOの2つの組織を持つ事は、暗号通貨の世界では滅多に見られないレベルのアカウンタビリティー(説明責任)を提供します。これはBitlandが取引の際に、他の通貨ではなく、Codastralを主要な通貨として利用する事を可能にします。

Bitlandは、不動産登記におけるブロックチェーンシステムのライセンス販売も可能です。彼らは、政府や機関投資家が、喜んで資金運用を支援すると考えているようです。現在このプラットフォームはプライベートα版で、2017年の第3四半期までに、ドローンなどによる遠隔地に向けた航空地図の作成を含む、セルフサービスシステムを提供するβ版を完成させることを望んでいます。

Cadastralの時価総額が決定する仕組みとは?

Cadastralsは、不動産登記ブロックチェーンのトランザクションに利用されるトークンです。これには、土地の購入、担保としての不動産ローン、および測量などのその他の不動産サービスが含まれます。

Cadastralsのトークンの時価総額は、いつでも取引で表せる土地の時価総額になります。従って、取引を行う際に、誰かが土地やサービスの価値を表すのに十分な指導的立場に立つ必要があります。今後は法的な課題を解決し、銀行や機関投資家、地価や不動産情報を提供する第三者機関などがデューデリジェンスを行い、実際に実需が動き出せば、必然と適切な時価総額が決定されそうです。Bitlandは、2017年2月に不動産取引を行うUbitqity(ユビットクイティ)と提携を発表しています。

UBITQUITY, THE BLOCKCHAIN-SECURED PLATFORM FOR REAL ESTATE RECORDKEEPING, ANNOUNCES STRATEGIC PARTNERSHIP WITH GHANA-BASED BITLAND(2017.2.6)

またBitlandは、Cadastralsの価値を安定させるために収益の20%に相当する決済準備金を積み立てます。これは、ボラティリティを最小限に抑えるために、効果的にトークンを売買します。準備金はまだ用意されていませんが、おそらくBitlandが管理する銀行口座になる予定です。

Bitlandのブロックチェーンには、個人だけでなく法人の登録も可能です。スマートシティ計画を進めるモーリシャスでは、初めて「Avalon Golf Estate」という、ゴルフ倶楽部を経営する、法人のカントリークラブの不動産情報が登録されました。このゴルフ場の価値だけでも、1億5千万ドル以上に上ります。

ブロックチェーン以外の3つの重要な要素

チームは、必ずしもブロックチェーンの技術が、このプロジェクトの重大なボトルネックであるとは認識していません。実際に、ガーナで成功したブロックチェーンベースの土地登録制度の開発には、暗号で保護された元帳に加え、3つの事が必要です。

  1. ブロックチェーンにアクセスする為のインフラ:チームの計画の一部は、誰もがインターネットにアクセスする環境を提供する事であり、太陽光発電式無線LANタワーのシステムを構築する事です。彼らは、ICO後も公的資金と慈善資金で、資金調達を行うつもりです。
  2. 地所有権の執行: チームは、ブロックチェーンに代表される財産権には、政府の執行の必要性を理解しています。Bitlandは、運営する全ての国で、政府の協力を必要とします。
  3. Cadastralsを現地通貨に交換するシステム(もしくはCell Phone Minutes):ガーナ人は、Cadastralsを現地の商取引に使う事が出来ます。彼らは2年間に渡って地元で奉仕活動を行っており、28のコミュニティーを持っています。彼らはこれを実現させる為の、十分な交流があると信じています。

Bitlandのチームメンバー&ビジョン

チームには、3人の中核メンバーがいます。Narigamba Mwinsuubo(創業者兼CEO)は、ネイティブのガーナ人で、このトピックについて数年間書いています。Chris Bates(CSO)は、Factomに関連した経歴を持つ電気通信の専門家です。Elliot Hedman(COO)は、アリゾナに拠点を置く起業家で、ミュージシャンでもあり、米国空軍で13年半過ごした経歴を持ちます。

写真左から、Matt Grady(研究開発)、Brock Hager(ウェブ管理者)、Ryan Berry(財務コンサルタント)、Lauren Bates(不動産コンサルタント)、Elliot Hedman、 Chris Bates、そしてiPadのBryce Weiner(ブロックチェーンスペシャリスト)です。

Bitlandは、人々が実際にお金を動かし、商業活動に従事する事を促すシステムを作りたいと考えています。多くの人はBitcoinを投機的目的で購入しますが、決してそれを利用する予定はありません。これは暗号通貨の長期的な視点で問題です。 そもそもBitlandは、暗号通貨を使う必要はありませんでしたが、彼らはその技術を通貨として正当化したいと考えました。彼らは不動産投資信託としてのCadastralを、現地の商取引としての通貨としても、流通させる事を目指しているようです。

Bitlandという自由主義者が人を育て、死んでいる富を開放する

Bitlandは、よくあるブロクチェーンありきのプロジェクトではなさそうです。昔から存在する政府などの土地腐敗問題を解決する為に取り組んできたプロジェクトであり、たまたまその問題解決の延長線上に、ブロックチェーンが選ばれただけのようです。そして、ICOで集まった資金ではこの問題は解決出来ません。上記はモーリシャスの事務所の写真ですが、少なくとも初期投資として、事務所のレンタル費用や什器備品など、まとまった経費が必要なのは明らかです。

Bitlandは、決してネット上だけで完結する、オープンソースプロジェクトの類ではありません。実際に現場でコミュニティーを形成し、土地の測量や政府とのネゴシエーションを必要とします。プロジェクトは、ブロックチェーンだけでなく、コミュニティーを通して、信頼を確立しようとしているようです。政府や大学とも協力し、青少年を育てる事にも力をいれています。

さて、本題のトークン放出事件に入りましょう。そもそも、資金不足でこのプロジェクトが挫折してしまったら、誰が代わりにこのプロジェクトを引き継ぐのでしょうか。複数に拠点があればあるほど、補助金などの収入は期待出来るはずです。そして土地登記が進まなければ、トークンの価値は意味を持ちません。登記件数が拡大するスピードが早まれば、不動産投資信託としてのCadastralのポテンシャルも増加するでしょう。プロジェクト側の視点に立てば、本質を理解出来ます。

Bitlandの取り組みは、かなり壮大です。政府との関係も時間を要するかも知れません。投資家は、プロジェクトの実態とかけ離れた、トークンの価格にばかり目が行きがちです。しかし、私はBitlandは社会的に意味のあるプロジェクトだと考えています。Forbesも、2020年までにブロックチェーンが破壊する可能性がある5つの分野として、この「不動産市場」を挙げています。なお、現在世界でブロックチェーンを活用した不動産取引を提供しているのは、Bitlandと提携している米国のUbitqityだけです。

実際にプロジェクトが成功するかは分かりませんが、今後アフリカ市場が拡大するのは明白です。そして重要なのは、Bitlandには世界中の土地に関する紛争問題を解決するポテンシャルがあるという事です。彼らは今、アジアとアフリカへの投資をつなぐ、インド洋のイノベーションハブとして期待される、モーリシャスに拠点を移しています。

Bitlandは、時価総額が低迷しているためか暗号通貨の世界ではあまり話題になっておらず、多くの投資家はその可能性に気づいていないようです。私は長期的な視点でこのプロジェクトを見守って行きたいと考えています。

ブロックチェーンが2020年までに「破壊」する可能性がある5つの分野「Forbes」(2017.4.8)

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