DePINにおけるNuNetの役割:コンピューティングアグリゲーター機能を備えた分散型クラウドサービス
NuNet(ニューネット)の概要
NuNetは、2018年にSingularityNET X-Labの支援プログラムを通じてインキュベートされた、2番目のスピンオフプロジェクトです。CEOのKabir Veitas博士は、2018年2月からSingularityNETのメンバーとして参加しており、学際的研究の博士号(2019年)、AIの修士号(2009年)、国際ビジネスマネジメントの学位(2007年)、経営学の学位(1997年)を取得しています。
NuNetの目的は、オープンエンドコンピューティングのパラダイムに基づき、世界的なコンピューティングフレームワークに、PC、携帯電話、自動車、ロボット、ゲーム機などの、あらゆるコンピューティングリソースとデータ接続を可能にする相互運用性レイヤーを開発することです。NuNetは、自己組織化のボトムアップ要素を取り入れ、複雑な計算システムの設計と運用を目指します。また、NuNetのAPI of APIsは、世界のコンピュータのバックボーンとなり、誰もがストレージ、計算能力、アルゴリズム、コード、データ、人間の創造性、機械の知性の価値を共有して収益化し、利用することができるようになります。
初期のユースケースは、SingularityNETの分散型AIエージェントの計算インフラストラクチャのサポートです。NuNetのプライベートα版は2021年9月8日にリリースされ、パブリックα版はTGEの数ヵ月後にEthereumに登場し、その後はCardanoにも対応される予定です。
CardanoのCatalyst Fund7では、ステークプールオペレーター向けの分散型クラウドサービスの開発資金として12万ドル、Fund8では分散型GPU MLクラウドサービスの開発予算として8万3,000ドルの助成金を獲得しています。
また、DeFiプラットフォームであるSingularityDAOと戦略的なパートナーシップを結んでおり、彼らはNuNetのローンチパッドやNTXトークンの流動性の支援だけでなく、NuNetの計算資源を利用する重要な初期顧客にもなる予定です。
NuNetはコンピューティングアグリゲーター機能を備えたマルチサイドマーケットプレイスでもあり、他の様々な分散型プラットフォームを意識して構築されています。当面は、SingularityNETや人工知能とブロックチェーンの業界団体であるDecentralized AI Alliance(DAIA)のメンバーと密接な関係を持ちながら開発を進めていく予定です。
ロードマップ
NuNetの3つの構成要素
NuNetは、以下の3つの要素で構成されています。
- トークノミックインセンティブ:これは、インフラストラクチャーの最も重要な部分です。NTXトークンに基づくトークノミックシステムにより、計算資源が活発に交換される多面的な市場を育成します。アルゴリズムが自己実行するために必要な計算能力に対して報酬を支払うだけでなく、実行結果を他のアルゴリズム、デバイス、ビジネス、または直接ユーザーに販売することができます。
- アダプター:NuNetに搭載された各デバイス上で動作する軽量な実行ファイルで、各デバイスをプラットフォームのコントロールプレーンとデータプレーンに接続します。アダプターは、ホストデバイスで利用可能な計算リソースの測定、リアルタイムでのパフォーマンスの追跡、ネットワーク上の他のマシンとの通信の確立など、デバイスがNuNetに統合するために必要な機能を実行します。
- API(API of APIs):これは、アダプターがプラットフォームやデータプレーン、コントロールプレーン上の他のマシンと対話するために使用する共通言語です。APIはプラグイン可能で、オープンかつ発展的なAPIのオープンエンドなコレクションになります。すべての機器はNuNetのアダプターを実行しますが、ネットワーク上の役割に応じて異なるAPIを使用します。
NuNetがターゲットとする巨大な成長市場
Canalys社が2021年10月に発表したレポートによると、世界的なクラウドサービスの市場規模は494億ドル(約5兆6,300億円)で、市場はAmazonが32%、Microsoftが21%、Googleが8%のシェアを占めています。これらのビッグテック企業が業界を支配している理由は、規模の経済を実現することで、サービスを柔軟で安価に提供することができるためです。
一方、NuNetの目的は、このような中央集権的なクラウドインフラからエンドユーザーのデバイスに市場を置き換えることではなく、誰もがクラウドプロバイダーになれるような環境を作ることです。コンピューティングリソースを持っている人は、NuNetのAPIやアダプターを利用して、誰でも計算ワークフローを実行したい人に自分のリソースを提供することができます。この市場は、現在のクラウド市場よりもオープンかつ中央集権的な巨大企業によるロックダウンが少ないマーケットを創造します。
ホワイトペーパー
以下、NuNetのホワイトペーパーになります。プロジェクトの開発計画や進捗状況は、JIRAのダッシュボードから確認できます。
提携パートナーとフレームワーク
NuNetは、API of APIsを利用して様々なデバイス、コンピューティングフレームワーク、データ共有プロトコルの技術的な統合を実現します。各デバイスは、NuNetのグローバルな計算フレームワークによって、どのようなアルゴリズムを実行するかを自己決定することができます。また、使用された計算資源に対して異なる金額の暗号通貨やそれに相当するフィアットで課金することができます。さらに、データ共有に関しては、データの共有範囲や購入・レンタル条件を設定することができ、他のデバイスからデータの購入やレンタルも可能になります。
NuNetは、API of APIsとメタマーケットプレイスによって、このようなハードウェアデバイスと計算プロセスの社会と経済を実現しようとしています。多様な種類のデバイスとその所有者は、相互運用によってこの計算プロセスの社会に参加することができます。プラットフォームは、SingularityNETや計算資源のGolem、iExec、ストレージ資源のTardigrade、Filecoinなど、既存のフレームワークにもAPIを提供し、アルゴリズムの調達を可能にしています。
また、最も重要な点として、ネイティブなNTXトークンに基づくトケノミックシステムが挙げられます。これにより、アルゴリズムが自己実行するために必要な計算能力に対して対価を支払うだけでなく、他のアルゴリズム、デバイス、ビジネス、または直接ユーザーに実行結果を販売することもできます。
将来的なパートナー候補
NuNetのフレームワークに組み込まれる予定のプラットフォームの一部を紹介します。
- Golem:コンピューティングパワーの分散型マーケットプレイス
- Ocean Protocol:トークン化されたサービス層を備えたデータ経済と関連サービスの為のエコシステム
- iExec:ブロックチェーンベースの仮想クラウドコンピューティングとデータ貸し出しのフレームワーク
- Enigma:ウェブをより速く、より安全に、よりオープンにするためのP2Pハイパーメディア・プロトコル
- Filecoin:世界中の誰もがストレージプロバイダーとして参加出来る分散型ストレージマーケット
- Storj Labs:分散型クラウドストレージ
NuNetのフレームワーク
NuNetは、次の3タイプの参加者の相互作用を自主規制します。
- データ・計算・AIサービスの提供者
- データ・計算の利用者
- ネットワーク運用エージェント
具体的な参加者のワークフロー
- コンピューティングリソースの所有者は、自分の専門的な能力を表現・公開し、それを必要とするプロセスに提供するために、多様なエコシステムの中でコンピューティングリソースを提供します。
- ストレージリソースの所有者は、その能力を表明・公開し、データ所有者の好みに応じて、無料またはトークンと交換で提供します。
- 計算プロセスの所有者は、自分の専門的な計算やデータの要件を表明・公開し、リソースやノウハウに入札するとともに、エコシステム全体に対して自らの機能性や能力を提供・スポット販売します。
- データ所有者は、自分のデータの説明、アクセス制限、プライバシーの考慮事項を公開し、プロセスが既存のデータを利用し、その改良と成長に貢献できるようにします。
- 各参加者は、ネットワークが彼らのリソースの使用をどのように導くべきかについて自分の好みを表明し、各リソースの使用者に対して交換可能なトークンを請求することができます。
- 各参加者は、フレームワークを通じて提供されるリソースの無料または有料の利用を入札し、NTXトークンを使用して支払うことができます。
トークノミクス
NuNetのNTXトークンは、マルチチェーン展開されるように設計されており、計算ワークフロー、アカウンティング、マイクロペイメントの決済のためにユーティリティトークンとして使用されます。SingularityNETのAGIXとのトークン交換が可能であり、ユーザーはNTXトークンを使用してコンピューティングリソースの代金を支払い、使用されたNTXは自動的にAGIXに変換され、AIサービスの利用に使用できます。
現在は、EthereumとCardanoの2つのブロックチェーンが対象となっていますが、将来的には複数の分散型コンピューティングおよびデータプロビジョニングプラットフォームが含まれる予定です。
NTXトークンのコントラクトアドレス
- Ethereum:0xf0d33beda4d734c72684b5f9abbebf715d0a7935
- Cardano:edfd7a1d77bcb8b884c474bdc92a16002d1fb720e454fa6e99344479
- BSC:0x5C4Bcc4DbaEAbc7659f6435bCE4E659314ebad87
NTXトークンの配布構成
NTXトークンの総発行数は10億NTXです。 最初にEthereumで6億3125万NTX(63.125%)、Cardanoで3億6875万NTX(36.875%)が発行されます。AGIX保有者には、コミュニティ報酬の中から総発行数の5%がエアドロップされます。
NTXトークンは、最初に以下の3つのラウンドで配布されます。
- シード及びプライベートラウンド:NuNetの開発に価値をもたらす機関投資家に長期的なパートナーシップを提供する目的で配布されます。
- コミュニティラウンド:SingularityNETのエコシステムのトークン(AGIXおよびSDAO)の所有者に配布されます。
- パブリックラウンド:2つのLaunchPadのIDOおよびDEXを通じてトークンリストに加えられ、配布されます。
トークンのローンチ時には、総発行数の30%にあたる3億NTXが割り当てられ、最初にその内の7,500万NTX(7.5%)が市場で流通します。トークンの販売価格は、プライベートとコミュニティラウンドでは0.02ドルから始まり、LaunchpoolとOccamのローンチパッドでは0.03ドル、最終的な売り出し価格は0.04ドルになります。
SingularityDAOによるコミュニティラウンドは、2021年11月17日に実施されます。このラウンドでは、総発行数の10%が割り当てられ、プライベートラウンドで提供されている同じレートと権利確定構造が適用されます。AGIXもしくはSDAOを保有するKYCに合格した適格参加者は、1USDTあたり50NTXを支払うことでトークンを受け取ることができます。トークンの請求は、11月26日13:00 UTCから可能になります。
その他の配分に関しては、コミュニティ報酬が9.00%、後援者が6.00%、チーム&アドバイザーが16.25%、研究開発準備金として21.00%が分配されます。NTXのアロケーションには、スマートコントラクトによる権利確定構造が導入されます。NTXは、Uniswap、MEXC Global、Minswap、SingularityDAOで購入することができます。
以下がトークンの配布構成とリリーススケジュールです。
アロケーション | 割合 | 総供給 | NTX-ETH | NTX-ADA | 初期配布 | 権利確定の時期 |
マイニング報酬 | 15.25% | 152,500,000 | 7.63% | 7.63% | - | 6ヶ月間ロック後 60ヶ月間で放出 |
シードラウンド | 2.60% | 26,000,000 | 2.60% | - | 0.26% | 残りは 12ヶ月で均等放出 |
プライベートラウンド | 14.40% | 144,000,000 (@ 0.02 ) | 14.40% | - | 1.44% | 残りは 12ヶ月で均等放出 |
コミュニティラウンド (SingularityDAO) | 10.00% | 100,000,000 (@ 0.02 ) | 10.00% | - | 1.00% | 残りは 12ヶ月で均等放出 |
ローンチパッド (Launchpool、Occam) | 2.00% | 20,000,000 (@ 0.03 ) | 2.00% | - | 1.00% | 残りは 2ヶ月で均等放出 |
パブリックラウンド (DEX) | 3.50% | 35,000,000 (@ 0.04 ) | 3.50% | - | 3.50% | - |
コミュニティ報酬 | 9.00% | 90,000,000 | 9.00% | - | - | TGEの1~3ヶ月後 最大12ヶ月間 |
後援者 | 6.00% | 60,000,000 | 3.50% | 2.50% | 0.3% | 残りは 20ヶ月で均等放出 |
チーム&アドバイザー | 16.25% | 162,500,000 | - | 16.25% | - | 3か月間ロック後 24ヶ月間で均等放出 |
研究開発準備金 | 21.00% | 210,000,000 | 10.50% | 10.50% | - | 1か月間ロック後 36ヶ月間で均等放出 |
Total | 100.00% | 1,000,000,000 | 63.13% | 36.88% | 7.50% | - |
NTXトークンのエアドロップ
NuNetでは、2022年1月からAGIX保有者にNTXトークンがエアドロップされます。エアドロップは、2022年1月5日から90日ごとに4回に分けて実施され、総発行数の5%にあたる5,000万NTXが毎回均等に(25%ずつ)希望者に分配される予定です。エアドロップへの参加には、期間中2,500 AGIXを最低維持する必要があり、スナップショットはプライベートウォレットで保管されている必要があります。対象となるウォレットは以下の4種類です。
- ステイカー:SingularityNETのステーキングポータル(staking.singularitynet.io)でステーキングされたAGIX
- ホルダー:秘密鍵を保有するEthereumのプライベートウォレットのAGIX
- 流動性プロバイダー:SingularityDAOの流動性プール(関連するUniSwapプール)のAGIX-WETH、AGIX-USDTのLPトークン
- 貢献者:SingularityDAOのDynaSet(dynSING)のLPトークン
取引所(たとえばバイナンス)で保管しているAGIXに対してはエアドロップは行われないため、プライベートウォレットで保管している必要があります。また、エアドロップは1年間にわたって実施される予定であるため、予期せぬ事態が発生する可能性があります。AGIXのCardanoへの移植が行われた場合には、プログラムの仕組みが変更される可能性があることに注意してください。
エアドロップの計算式
エアドロップの1AGIXあたりの報酬は、AGIXトークンの残高が多いほど僅かに少なく、残高が少ないほど僅かに多くなります。この逓減効果は、SDAOのエアドロップの時よりも軽減されていますが、多くのAGIXを保有している場合は高い報酬が得られる一方、リターンは徐々に減少していきます。 SingularityNET Staking PortalにステイクされたAGIXは、20%加算された報酬を受け取り、より長期的なメンバーが評価を受ける仕組みが導入されています。エアドロップの配布には、以下の関数が利用されます。
Reward = X / (Sum of all X) * 12,500,000 NTX
X = Log10(Score +1)
Score = (Balance + (0.2* amount staked)) / 100,000 ※アルゴリズムLog10の詳細はコチラから
1.「Reward」とは、全てのエアドロップ条件を満たした後、ユーザーに付与されるNTXの量を指します。
2.「X」とは、ウォレットに分配されたエアドロップの総量の割合を考慮して計算するために使用される変数です。
3.「Score」とは、ウォレットとステーク残高に基づいて各ウォレットの個別の報酬を計算するために使用される変数であり、大きなトークン残高よりも小さなトークン残高にインセンティブを与えるためのスケーリング係数を含みます。
4.「Balance」とは、スナップショット期間中におけるウォレット、ステイク、LPプール、DynaSetsのAGIXの最低残高を指します。
5.「amount staked」では、SingularityNET Staking Portalにステイクされた最低残高は合計残高に20%加算されます。
エアドロップの配布スケジュール
エアドロップは、各期間の継続的な適格性スナップショットに基づいて決定されます。最初の3つの期間は、約1ヶ月間のスナップショットを行い、毎回新規のユーザーが参加可能です。最後の4回目については、2022年1月5日から10月16日までの継続的なスナップショットが参加条件となり、1回目からAGIXを保有しているユーザーが対象となります。最初のスナップショットよりも残高が減少した場合、その後の報酬は低い残高に基づいて変更され、以降増やすことはできません。
スナップショット期間中にウォレットの残高が2,500 AGIXを下回ると参加資格を失います。LPトークンの残高は変動する可能性があるため、スナップショット期間中に最低残高を下回らないように注意してください。また、スナップショット期間中にAGIXの残高が増減しても、適格条件さえ満たしていればその期間中の最低残高が考慮されます。
次に、エアドロップの登録と請求はSingularityNET Airdrop Portalで行われます。全ての参加希望者は、各セッションが終了した翌日から登録手続きを行う必要があります。手続きには一切ガス代はかかりませんが、トークンの実際の請求には必要となります。トークンの受け取り方法として、ウォレットまたはSingularityDAOのNTX bonded staking poolのいずれかを選択することができます。トークンの請求は、最終受取期限である2022年11月22日までに一括で行うか、必要に応じて各セッション後に引き出すことができます。期限切れの未請求分については、コミュニティ報酬プールに戻されるため、注意してください。
以下が実施スケジュールになります。
1回目 | 2回目 | 3回目 | 4回目 | |
スナップショット | 1月5日~1月19日 | 3月19日~4月19日 | 6月18日~7月18日 | 1月5日~10月16日 |
登録期間 | 1月20日~1月25日 | 4月20日~4月25日 | 7月19日~7月24日 | 10月17日~10月22日 |
請求開始日 | 1月26日 | 4月26日 | 7月25日 | 10月23日 |
ステークウィンドウ 締切日 | 1月30日 | 4月30日 | 7月29日 | 10月27日 |
分配数 | 12,500,000 NTX (25.0%) | 12,500,000 NTX (25.0%) | 12,500,000 NTX (25.0%) | 12,500,000 NTX (25.0%) |
<随時情報は追加します>
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