Cardano(カルダノ)とADA(エイダコイン)の概要と今後のロードマップ
カルダノ(Cardano)の概要
Cardano(カルダノ)は、一言で言うと第3世代のブロックチェーンです。第1世代(Bitcoin)と第2世代(Ethereum)を改良した第3世代のブロックチェーンとして設計されており、スケーラビリティ(拡張性)、インターオペラビリティ(相互運用性)、サステナビリティ(持続可能性)の3つの問題解決に取り組んでいます。
カルダノのビジョンは、「オープンで包括的なテクノロジーの新基準をもたらし、古いものに挑戦し、持続可能なグローバルな分散型イノベーションの新時代を活性化する事」です。カルダノ財団は、2019年12月13日にアイルランドのMcCann Dublin社と提携し、ブランドの再編を行っています。
また、カルダノは科学哲学と学術研究を駆使して誕生した、初のプロックチェーンプロジェクトです。多くの暗号通貨プロジェクトは実験的側面が強く、走りながら開発を行っているので、後から問題が発覚する事が少なくなくありません。一方、カルダノでは、学術的な論文をベースに開発しており、学会などに提出した論文を多くの研究者からレビューやフィードバックを受けています。開発は、学術的に正しく安全な設計であると確認されてから行われている為、後から問題が起こる事が無いと言われています。
まず、カルダノのブロックチェーンは、「会計」と「計算」が違う2つのレイヤーで構成されています。ADAの取引などの決済とトランザクションを追跡するのがCardano Settlement Layer(カルダノ・セトルメントレイヤ)で、スマートコントラクトとアプリケーションの実行を行うのがCardano Computation Layer(カルダノ・コンピュテーションレイヤ)です。こうしてレイヤ構造を分ける事により、新しい機能をテストする際にはコンピュテーションレイヤーをサイドチェーンとして利用し、メインチェーンでのフォークを避ける事を可能にします。
また、カルダノのハードフォークコンビネータ技術は、大幅な調整を行うことなく、複数のプロトコルの組み合わせを可能にするように設計されています。これにより、古いプロトコルから新しいプロトコルへのスムーズな移行が可能になり、一般的な初期のブロックチェーン世代のリスクが高い不確実なハードフォークと違い、安全に制御された形でソフトウェアアップデートが可能になります。
なお、現在カルダノの残高管理は、Ethereumで利用されているアカウントベースモデルではなく、ビットコインと同じUTXOモデルを拡張したものを採用しています。カルダノのアルゴリズムは、エディンバラ大学のアゲロス・キアイアス教授(IOHKのチーフサイエンティスト)が率いるチームによって設計された、ウロボロスと呼ばれるProof of Stake(PoS)を使用しています。
カルダノプロジェクトのトロイカ体制
2015年2月にスイスのカルダノ財団の設立から始まったプロジェクトは、香港のIOHK(現:IOG)、日本のアテインコーポレーション(現:EMURGO)の3社による、合同プロジェクトとして立ち上がりました。その後、カルダノのメインネットは2017年9月29日にリリースされ、現在3社の従業員は総勢500名を超えています。以下が、主な3社の役割分担になります。
- Cardano Foundation(カルダノ財団)-スイス:カルダノとカルダノエコシステムの発展を監督する独立した標準化団体です。カルダノユーザーと商業コミュニティを育成し、成長させ、教育すること、規制や商業に関する事項について当局と関わること、そしてブロックチェーンと暗号通貨標準化団体として活動しています。
- IOG(インプットアウトプットグローバル)-米国:学術機関、企業、および政府機関向けの暗号通貨とブロックチェーンを構築するテクノロジーおよびエンジニアリング企業です。カルダノプラットフォームの設計、構築、および保守を行っています。現在、暗号学者、数学者、開発者などが500名以上在籍しています。
- EMURGO(エマーゴ)-シンガポール:シンガポール、日本、米国、インド、インドネシアにオフィスを構えており、グループ全体で50名程度で構成されています。事業領域によっていくつかに分かれており、主にアプリケーション・ベンチャーへの投資を通じてカルダノプラットフォームの採用を促進し発展させる活動をしています。
以下、カルダノのホワイトペーパーになります。
カルダノ(Cardano)ロードマップ
カルダノは、大きく分けて5段階の開発構成になっています。各開発期間は特定の機能に基づいて設計されており、複数回のコードリリースによって実現されます。現在は4番目のBasho期に該当します。カルダノの各開発期は順を追って配信されますが、開発作業は並行して行われています。研究、プロトタイピング、開発が異なるラインで同時進行しているケースが多々あります。
- Byron(バイロン):基礎(2017年9月29日~)
- Shelley(シェリー): 分散化(2020年7月30日~)
- Goguen(ゴーグエン): スマートコントラクト(2021年3月2日~)
- Basho(バショウ): スケーリング(2022年1月11日~)
- Voltaire(ボルテール): ガバナンス
1)Byron(バイロン)- 基礎
Byron期は、何千にも及ぶGitHubコミットや何百時間もの研究を経て、2015年の財団設立から2年後にようやくスタートしました。カルダノが実体化したことにより、カルダノ財団、IOHK(現:IOG)、EMURGOの3社連合型ネットワーク上で、女性プログラマーであるエイダ・ラブレスに因んだADAが取引出来るようになりました。ネットワークの中枢であるアルゴリズムのウロボロスは、学術研究を基盤に構築された最初のPoSであり、数学的に保証されたセキュリティを誇ります。
さらに、IOGのADA専用公式デスクトップウォレット「ダイダロスウォレット」、EMURGOからは迅速なトランザクションとデイリーユースを目的に開発されたライトウォレット「ヨロイ」が提供されました。
Byron期は最初の技術開発期として位置付けられますが、同時に熱狂的なファンによる小さなグループからグローバルなコミュニティへと成長を遂げた時期です。この頃にはADAは30以上の取引所に上場し、時価総額でも世界レベルの暗号通貨として認められました。
2)Shelley(シェリー)- 分散化
Shelley期は、ネットワークの成長と発展の時代です。メインネットの公開から始まったByron期とは異なり、Shelleyへの移行はスムーズに行われるようにデザインされています。
Byron期のネットワークは3社の連合型でしたが、Shelley期には徐々にカルダノコミュニティによって実行されるノード運営にシフトして行きます。ノードの過半数がネットワーク参加者により実行されると、Cardanoは分散性を高めて安全性と堅牢性が飛躍します。また、Shelleyではステークプールとコミュニティによる運営を促進する、ADAの委任及びインセンティブスキームが導入されます。最新のゲーム理論とPoSに関する研究を通してデザインされたアルゴリズムにより、ユーザーはコミュニティの常駐ノードであるステークプール(SPO)に自分のステークを委任し、ネットワークに参加する事によって報酬を得る事が出来ます。
現在の主要なブロックチェーンプロジェクトは、10に満たないマイニングプールによってコントロールされていることが多く、悪意のあるグループや個人の攻撃者によりネットワークが侵害されるリスクに晒されています。一方、カルダノでは、約1,000のステークプールで均衡点に達するようにデザインされたインセンティブスキームが導入されており、Shelley期が終了するまでには、他の大規模プロジェクトの50~100倍に分散化されているだろうと期待されています。そればかりでなく、ビットコインのPoWが大量の電力が必要なのに比較して、カルダノのPoSでは家1件分の電力で賄う事が出来ます。
Shelley期は、ネットワークの自然な成熟期を顕現しています。実用性と報酬が増え、新規ユーザーと従来のユーザー共に価値が高まります。Shelleyが完全に分散化されたネットワークの下地を作り、Goguen、Basho、Voltaire期には、新しいアプリケーションエコシステムの時代が到来します。
3)Goguen(ゴーグエン)- スマートコントラクト
Goguen期の目標の一つに、Plutus(プルータス)の構築があります。Plutusは、関数型プログラミング言語Haskellのメリットを持つスマートコントラクトの作成を可能にします。1つのコードベースで、オンチェーンとオフチェーンの両方をサポートし、既存のスマートコントラクトの実装に比べて一貫性と開発における有用性が向上します。
また、Goguenでは、Plutus上に構築された金融コントラクト用のDSLであるMarlowe(マーロウ)を使用する事が可能になります。Marloweには、プログラマーでなくても金融関係のスマートコントラクトを簡単に構築出来るアプリケーション構築プラットフォーム、Meadow(メドウ)が搭載されています。このMarloweとMeadowにより、DeFiアプリケーション用のスマートコントラクトの作成が簡易化され、業界の専門家がプログラミングスキルを必要とせずに構築する事が可能となります。PlutusとMarloweを組み合わせる事で、実社会でも適用出来るエンタープライズレベルのスマートコントラクトを提供する事が可能になります。
カルダノにスマートコントラクトが加わると、核となる改良も行われ、有用性をさらに拡大する為のマルチ通貨台帳が追加されます。これにより、ユーザーは新規のトークンの作成だけでなく、多くの資産をトークン化する事が可能になります。これには、複数の暗号通貨が絡むスマートコントラクトとDAppsの統合が簡易化するという利点もあります。
Goguenは、エンタープライズレベルのスマートコントラクトとDAppsへの開発の道を開く、カルダノの機能性における大変革期です。BashoとVoltaire期には、さらにエキサイティングな機能性が到来します。
4)Basho(バショウ)- スケーリング
Basho期は、最適化、スケーラビリティの改良、そしてネットワークの相互運用性の開発です。これまでと違い、規模の拡大と大量のトランザクションを伴うアプリケーションの導入サポートを強化する為に、ネットワークの基盤となるパフォーマンスの改善に注力します。
Bashoの核となる開発の一つがサイドチェーンの導入です。サイドチェーンは、カルダノメインチェーンと相互運用性を持つ新たなブロックチェーンで、ネットワークの機能性拡張に多大な潜在性を秘めています。メインチェーンのキャパシティを拡大する為に、 シャーディングとしてサイドチェーンへ仕事を移します。サイドチェーンは、新機能を実験的に導入する際にも活用されます。また、カルダノのメインチェーンがUTXOモデルを継続する一方で、並行してアカウントモデルを機能させられるようになり、UTXOと切り替えて使用する事が可能になります。この結果、カルダノの相互運用性が飛躍的に高まると共に、ネットワークは新しいタイプのユースケースをサポートする事が出来ます。
総括的に言えば、カルダノは業界屈指のパフォーマンス、強靭さ、そして柔軟性を誇るブロックチェーンプラットフォームへと成長します。そして、ネットワークインフラストラクチャーはサステナブルかつ安全に拡大し、ネットワークの中枢における信頼性を損なう事なく、新たな機能性を追加する能力を得ます。
5)Voltaire(ボルテール) – ガバナンス
カルダノネットワークが真に分散化される為には、Shelley期に導入された分散型のインフラストラクチャーだけでなく、長期に渡る維持と改良を分散化された方法で行う事が出来る機能が必要です。Voltaire期には、カルダノネットワークが自給自足型システムになる為に必要な最後のパーツ、「投票システム」と「トレジャリーシステム」の2つが組み込まれます。
Voltaireでは、ネットワーク参加者にカルダノの改良案を提示する提案能力が付与されます。この提案は、ステーキングや委任に使用される既存のプロセスを活用して、ステークホルダーによる投票システムによって提案の可否が決定されます。このシステムにより、ネットワーク参加者はエコシステムの将来の開発に影響を及ぼす事が出来るようになります。
Voltaireでは、将来のネットワーク開発の為の資金源としてトレジャリーシステムが追加されます。これは全てのトランザクションに手数料が課金され、ステーキング報酬の20%がプールされます。トレジャリーシステムは、投票プロセスに従って決定された開発案件に資金を提供します。
投票システムとトレジャリーシステムが搭載されて、初めてカルダノは真に分散化を果たし、IOGの管理下から離れてコミュニティの手に委ねられます。コミュニティには、IOGによって確立された安全で分散化された基盤から、カルダノの成長、進化をさせる為に必要な全ての機能が引き渡されます。
カルダノ便利ツール
- IOG:IOG(インプットアウトプットグローバル)の公式サイトです。日本語ページもあります。
- Cardanoscan:カルダノのブロックチェーンエクスプローラーです。
- Innovation platform:コミュニティーがプロジェクトカタリストの提案者をインスパイアするためのブレインストーミングフォーラムです。
- Daedalus Wallet:ダイダロスウォレットのダウンロードが可能な公式サイトです。
- Yoroi Wallet:ヨロイウォレットのダウンロードが可能な公式サイトです。
- ADApools.org:各SPOのステーク、誓約、ROA、および手数料などが確認出来ます。
- PoolTool:SPOと委任者間の相互作用を促進する為に構築されたプラットフォームです。ステーキング報酬の履歴も確認出来ます。
- ADAex.org:カルダノのブロックチェーンエクスプローラーです。あなたのADA保有者ランキング(リッチリスト)も確認出来ます。
- Cardano Cube:カルダノ上に構築されたDAppsなどのプロジェクトが検索出来ます。
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カルダノ エイダ(ADA)トークンクラウドセール
カルダノは、独自のネイティブトークンである ADA を発行しています。2015年9月から2017年1月にかけて、日本をはじめアジア8カ国(韓国、中国、タイ、マレーシア、フィリピン、台湾、ベトナム)で、4段階のトークンクラウドセールが行われ、資金調達が行われました。ADAバウチャーの販売は、日本とイギリスの両方で代理人を務めたアティンコーポレーションによって行われ、総発行数450億ADAのうち、約260億ADAがクラウドセールに割り当てられました。期間中、一口最低1,000ドルから BTC で交換が可能で、1 ADA あたり平均0.00242ドルで取引されました。
カルダノが最終的に集めた金額は、6200万ドル(約69億円)にのぼり、ADA を購入した約1万4000人のうち、94%が日本だったと言います。当時、Ethereum が ICO で集めた金額は約1,800万ドル(約18億円)であり、カルダノの資金調達額がいかに大きなものであったかを物語っています。当初カルダノは、ゲームとギャンブル市場をターゲットにしているとされていましたが、資金調達後に現在のスタイルに転換し、これまでに最大の世界的ブロックチェーンプロジェクトの1つになっています。
Input Output Global(IOG)のチャールズ・ホスキンソン氏の経歴
カルダノの開発を請け負うIOG(旧:IOHK)のCEOであるチャールズ・ホスキンソン氏は、1987年11月5日生まれ(33歳)のアメリカ合衆国の数学者です。
2013年7月に、Steem、EOSの創設者であるダニエル・ラリマー氏と共にBitsharesの立ち上げを目指し、Invictus Innovations(インヴィクタス・イノベーションズ)を設立しました。Bitsharesは、分散型自立企業(DAC)や分散型取引所(DEX)の構築を目的にしており、アルゴリズムに20人前後の承認者(witness)からなるDelegated Proof of Stake(DPoS)を採用しています。しかし、ホスキンソン氏は創業者間の喧嘩が絶えなかったとの理由で、インヴィクタス・イノベーションズを4ヶ月で退社しています。
その後、2013年12月にヴィタリック・ブテリン氏やPolkadotのギャビン・ウッド氏らと共に、Ethereumの創設メンバーの一人として参加。チャールズ氏らはビジネスの構築を担い、ヴィタリック氏らが技術面を担当しました。しかし今回もEthereumの組織形態(法人もしくは非営利)に関する意見の違いを理由に、プロジェクト参加から僅か半年後の2014年5月にチームを去る事になります。
現在、カルダノプロジェクトに取り組むIOGは、2015年3月にEthereumで一緒に仕事をしていたジェレミー・ウッド氏と2人で創業されました。当時、このパートナーであるジェレミー・ウッド氏は、日本の大阪で暮らしていました。これがADAのクラウドセールが、アテインコーポレーションによって日本を中心に展開された大きな理由の一つになっています。
以下、カルダノ立ち上げ前のTEDxBermudaの動画では、彼のブロックチェーンを活用した社会問題解決に対する、基本的なアプローチを理解する事が出来ます。
IOGのアフリカ大陸の取り組み
IOGは、銀行口座を持たない「30億人」の為の金融システムの構築に取り組んでいます。カルダノのウォレット「Daedalus」とカルダノ上に構築された分散型IDソリューション「Atala PRISM」の開発を行い、長期的な重点開発拠点としてアフリカを挙げています。IOGは、アフリカ大陸25カ国に進出するエチオピアのコワーキングスペースである「iceaddis」と協力し、カルダノブロックチェーン技術の活用や教育を通して地元の起業家を支援しています。また、カルダノのAI-DSLの開発を共同で進めるSingularityNETとも提携し、エチオピアのオフィスを統合しています。SingularityNETは、2014年からエチオピアに拠点を置き、彼らのパートナーであるアディスアベバの「iCog Labs」を通じて、学生向けにAI開発と教育を促進しています。
IOGのプロジェクトがエチオピア、タンザニア、ケニア、ナイジェリア、南アフリカの5つの重点国で成功した暁には、更に20カ国に拡大し、プロジェクトを拡張させる予定です。なお、2019年よりジョージア政府と提携し、PRISMのパイロット検証を実施しています。以下、Atala PRISMを中心としたIOGのアフリカ大陸における具体的な取り組みになります。
- エチオピア:政府の教育省と提携し、PRISMを活用してエチオピアの3,500校に在籍する500万人の生徒と75万人の教師に生徒の成績を追跡するためのシステムの開発を計画。
- タンザニア:World Mobile Group社の株式の10%を取得し、再生可能エネルギーを活用したモバイルインターネットサービスを提供します。2022年の第1四半期までに数十万人の顧客にPRISMのIDを提供し、金融、医療、教育サービスや支払い方法としてADAを使用する事を計画。
<随時情報は追加します>
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カルダノステークプール【OBS】
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