分散型AIに特化したカルダノサイドチェーンのHyperCycleとHYPCトークンの概要

HyperCycle(ハイパーサイクル)の概要

HyperCycleは、2022年2月2日に発表された、Cardano Hydraをベースにしたサイドチェーンプロジェクトです。このプロジェクトは、SingularityNET独自のAI用カスタムブロックチェーンで、レジャーレスであることが特徴です。AIとブロックチェーンの業界団体Decentralized AI Alliance(DAIA)の中心的なメンバーであったシンギュラリティネット財団とTODA Networkが共同で開発を主導し、CEOはToufi Saliba氏が務めています。Cardanoのブロックチェーンは相互運用性を念頭に置いて設計されており、HydraにはCardanoメインネットを他のブロックチェーンと連携するためのフレームワークが含まれています。また、非公式にサイドチェーンと呼ばれるものや、完全に独立した他のブロックチェーンへのプロキシの実装もサポートしています。

HyperCycleは、分散型AI用にカスタマイズされたソリューションで、マイクロサービス向けに安価で高速な大規模チェーンを実現します。SingularityNETのAIエージェント間で想定されているマイクロトランザクションエコノミーのようなマルチエージェントシステム(MAS)を最適化するために設計されており、協力やコラボレーションに最適なモジュール式AIシステムの幅広い作成、展開、使用を促進します。エコシステムでは、Layer0++(Layer Zero Sub Plus Plus)と呼ばれ、ネットワークはそれぞれが独自のトランザクション履歴を所有し、独自の評判を蓄積する自律型エージェントの集団で構成されています。

Cardanoのブロックチェーンの設計は、すでにSingularityNETのプラットフォームにとって重要かつ必要不可欠な効率性の向上を提供していますが、HyperCycleのようなHydraサイドチェーンはそれを補強する役割を果たします。HyperCycleのスケーラビリティとスピードは、AGIの出現に必要不可欠であり、SingularityNETのプラットフォーム上で指数関数的なAPIの呼び出しを可能にする重要な役割を担います。現在開発は初期段階にあり、2022年Q2中に本格化する予定です。

HyperCycleの2025年までのロードマップ
HyperCycleの5つの特徴

HyperCycleは、Cardanoのスマートコントラクト言語PlutusとHydraインターフェースに加え、TODA/IPレジャーレスブロックチェーン、TODAアセットモデル、SingularityNETのProof of Reputation(PoR)システムを活用したサイドチェーンになります。

HyperCycleネットワークは、自律的なエージェント集団から構成され、それぞれが自分自身の取引履歴を所有し、評判を蓄積しています。これらのエージェントはリング状にグループ化され、P2Pでナノトランザクションを実行するコンセンサスを形成し、共同でEUTxO・Plutusベースのスマートコントラクトを実行します。

HyperCycleのエージェントは、TODAファイルとして構築され、ネットワークの履歴を安全に分散管理するサイクルトライ・メカニズムを備えています。なお、”HyperCycle”という名前は、このサイクルトライ・メカニズムに由来しています。Cardanoのメインチェーンは、HyperCycleのトランザクションの一部を保存する元帳ベースの長期バックアップストレージとして使用されます。また、Hydraインターフェースを通じてHyperCycleとの相互運用性が実現され、セキュリティが確保されます。

さらに、PlutusをOpenCog HyperonフレームワークのMeTTaプログラミング言語に統合することも想定されており、特定の垂直領域におけるスマートコントラクトに焦点を当てたMeTTaベースのDSL(ドメイン固有言語)を作成することで、広範なユーザビリティを可能にします。作成されたDSLは、基盤となるMeTTa/Plutusコードから自動生成されるローコードまたはノーコードのフレームワークとして、HyperCycleを効果的に活用しながら、ユーザに直接提示することができます。

以下、HyperCycleの5つの特徴です。

  • 新しいコンセンサスメカニズムを持つ安全なレジャーレス軽量プロトコル「TODA/IP」
  • SingularityNETのウエイトリキッドランク評価システム「Proof of Reputation」
  • Plutus言語とExtended UTxOモデル(EUTxO)を含むCardanoプラットフォーム
  • Cardano Hydraサイドチェーンプロトコルでセキュリティに関連する重要な機能や検索性を実現
  • OpenCog HyperonのMeTTa言語は、Plutusの拡張機能としてアプリケーション固有のスマートコントラクトDSLを作成
ホワイトペーパー

以下、HyperCycleのホワイトペーパーになります。

Cardano Hydraとは?

Hydraは、Cardanoの4段階目のBasho期の主要コンポーネントで、ネットワークセキュリティとスケーラビリティに対処するために設計されたLayer2ソリューションです。大規模なストレージを必要とせずに、スループットの増加、遅延の最小化、コスト効率の高いソリューションを提供します。

Hydraの「Hydra Head」は、EUTxOモデルを使用した証明可能安全性を持つ「同型的ステートチャネル」です。限定された参加者間で使用されるオフチェーンのミニ台帳で、オンチェーンのメイン台帳と同じように機能します。チャネルは2つ以上のピア間の通信パスであり、すべての参加者がトランザクションに同意する、単純なコンセンサスアルゴリズムに従います。

参加者は、最初にHeadを形成するとき、特定のルールの下で資金をロックするオンチェーンのスクリプトアドレスに資金を移動します。このスクリプトが、オンチェーンでのプロトコルの実行の安全性と、参加者同士がお互いを騙すことができないことを保証します。オフチェーンからの退出は、最後にすべての参加者が合意に達した状態でHeadを閉じることによって行われます。Hydra Headは、Head内でほぼ瞬時にファイナリティに達することができますが、中には数時間から何カ月にも渡る長期的なHeadも存在します。「Hydra Tail」など他のプロトコルは、現在研究中です。

Hydra Headのライフサイクル

HyperCycleの3つの構成要素

HyperCycleは、TODA、SingularityNET、Cardanoの3つのコンポーネント技術を組み合わせることで、安全性、拡張性、そして独自に最適化されたソリューションを相乗的に生み出し、SingularityNETプラットフォームの実用性、有用性、そして普及率を大幅に拡大します。

以下、各コンポーネントの特徴をご紹介します。

1)TODA/IP Protocol and Asset Model

TODA/IPプロトコルは、レジャーレスの設計を採用した革新的な技術であり、多くのブロックチェーンの複製された分散型台帳技術に代わるものとなります。TODA/IPプロトコルは非中央集権的であり、標準的な台帳技術のオーバーヘッドを大幅に削減します。個々のレコードはそれぞれローカライズされた台帳に関連付けられ、ブロックチェーンネットワークの「ノード」として機能し、自身の記録を提供するだけでなく、他のトランザクションの検証も行います。

2)SingularityNET Proof of Reputation

HyperCycleは、SingularityNETのProof of Reputationを採用しています。このシステムは、ネットワーク上のエージェントの評価値を適応的に更新するためのアルゴリズムフレームワークです。機械学習主導の「レピュテーションインテグリティ分析」を活用して、評判の不正を特定し予測することもできます。SingularityNETのProof of Reputationは、取引に負担となるオーバーヘッドを発生させることなく、ネットワークに対する様々な種類の攻撃を回避するのに役立ちます。このシステムは、HyperCycleの独自のTODA/IPコンセンサスメカニズムと並んで、取引の検証者を決定する上で不可欠なものです。

3)Cardano Plutus、EUTxO、Hydra Protocol

Cardanoのブロックチェーンは、TODA/IPプロトコルとProof of Reputationシステムを安全に統合し、トランザクション処理をサポートしています。HyperCycleはサイドチェーンの基盤レイヤーを提供し、Cardano Hydraプロトコル、EUTxOモデル、および検証可能で安全なスマートコントラクト言語Plutusを活用しています。Cardano Hydraプロトコルは、オフチェーンでの取引を柔軟かつ安全に処理し、最小限のストレージで大量のトランザクションを迅速に処理することができます。また、CardanoのEUTxOモデルとPlutus言語は、HyperCycleのサイドチェーンにもユニークに適しています。HyperCycleは、Plutus言語のスマートコントラクトを実行し、多くの専用スクリプトをホストすることができる予定です。

HyperCycleとCardanoネットワークの関係

2つのHypercycleリングとCardanoメインチェーンとの接続概念図

それでは、HyperCycleとCardanoネットワークの関係について見ていきましょう。HyperCycleネットワークは、それぞれがHyperCycleエージェントのセットを含む「リング」の集合体から成り立ち、各エージェントは自身の取引履歴の記録を保持・管理し、他のエージェントと様々な種類の関係を結びます。標準的なブロックチェーンとは異なり、HyperCycleはTODAとTODA/IPの主要な構造と手法を採用しており、個々のエージェントとその目的に応じた相互作用がシステムの中核です。大規模な複製台帳は必要ありませんが、台帳を利用する場合は、エージェントが自身の履歴や特性に関するメタデータを保持するための効率的な補強として機能します。

各リングは、独自にコンセンサスを行い、Cardanoメインネットワークに接続して、選りすぐりのサブセットのスナップショットを送信します。各リングには、そのリングの取引の検証に深く関与する一定数の継続的なバリデータノードと、様々な基準に基づいて臨機応変に参加できる他のノードが含まれています。各リングのバリデータは、CardanoのHydra Headにおけるマルチパーティステートチャネルの参加者のような役割を果たします。HyperCycleリングにおける非バリデータまたはオポチュニスティックバリデータの参加者は、Hydra Tailプロトコルと同じですが、HyperCycle Tailプロトコルの特定の設計はHydraと異なる可能性があります。

HyperCycleリングのセキュリティ

HyperCycleリングに参加するノード間で展開されるSingularityNETの評価システムは、各ノードに動的に更新される評価指標を提供します。これにより、HyperCycleリング内のバリデーターの選択が、より高い評価を得ている一部のノードに偏ることを回避することができます。レピュテーションに依存することで、様々な攻撃を比較的分かりやすく、エレガントな方法で回避することができます。この評価システムを構築する際には、AGIXやADAのステーカーやHyperCycleトークンの早期購入者に初期の評価ブーストを与えることが想定されています。

異なる目的に特化した各HyperCycleリングは、異なるコンセンサスメカニズムを使用できます。例えば、セキュリティ保証と処理のスピードやコストのバランスを調整することができます。プロトコルレベルのセキュリティよりも高速で安価な処理が重要な場合は、純粋な台帳なしのコンセンサスを選択することができます。セキュリティを最大限に高めたい場合は、リングやリングセットレベルで階層的にシャーディングされたカスタム台帳を導入し、コストと信頼性を高めることも可能です。HyperCycleは、パブリックとプライベートの展開を柔軟にサポートし、SingularityNETのアプリケーションは、両方のHyperCycleリングにサブネットワークを配置することができます。

OpenCog HyperonのMeTTa言語

HyperCycleの有望なアプリケーションの主要な応用分野として、Swarm AI(群知能)、オンラインネットワークにおける評価と報酬、決済と処理能力の分散化、パブリックとプライベートチェーンの適応的な融合などが挙げられます。アプリケーションの開発者は、そのドメイン領域に適したシンプルで使い勝手の良い方法で開発することができます。

この目的のために、OpenCog HyperonのMeTTaプログラミング言語をPlutusに統合します。MeTTa言語は、高度なAIとAGIのプロトタイプのためにカスタマイズされた言語で、Haskellフレームワークとして展開され、金融、医療、ソーシャルメディア、サプライチェーンなどの垂直アプリケーション分野で、PlutusベースのDSLとローコード/ノーコードインターフェースを作成するために利用される予定です。特定の垂直領域におけるスマートコントラクトプログラミングに焦点を当てたMeTTaベースのDSLを作成することによって、幅広いユーザビリティを可能にする戦略を想定しています。

Tokenomics(トークノミクス)

HyperCycleネットワークに参加することで、自分のコンピューティングパワーを収益化し、他のAIシステムを強化するAI計算に協力し、自分自身のAIをAGIネットワークに統合して性能を向上させることができます。HyperCycleのネイティブトークンであるHYPCは、このネットワークにアクセスするための通貨であり、AIアプリケーションを動力化するエージェントを実行するために必要不可欠です。以下は、トークンの主なユーティリティについてです。

  • ネイティブトークン:HyperCycleの独自のネイティブトークンは、エコシステムを管理し、参加者にインセンティブを与える役割を担います。
  • ガバナンスと投票:トークン保有者はプラットフォームの決定に対して発言権を持ち、コミュニティ主導のアプローチを促進します。
  • ステークと報酬:トークンをステークしてネットワークのコンセンサスメカニズムに参加することで、報酬を得ることができます。
  • 取引手数料:トークンは取引手数料の支払いに使用され、HyperCycleエコシステム内でスムーズなやり取りを保証します。
  • 導入の動機付け:トークンによるインセンティブを提供することで、新しいユーザー、開発者、企業を惹きつけ、プラットフォームとアプリケーションの成長と拡大を促進します。
ノードエコノミクスと報酬

HyperCycleは、脳のシナプスのようにノードが協働し、コミュニケーションをとる自己組織化システムです。ノードは互いに連携して複雑で適応性の高いシステムを構築することができます。これにより、モジュールレベルで協調型AIに必要なコミュニケーションとコラボレーションを実現することができます。ノードのネットワーク貢献度スコアは、以下の式で計算されます。

(稼働率 × 評判 × 計算)= ネットワーク貢献度

各要素は1.26を超えることはできず、最大で2.0003になります。
(例:1.26 × 1.26 × 1.26 = 2.0003)

現時点では、各ノードのソフトウェアライセンスは96ドルで販売されています。オペレーターは、2の10乗の合成数である1,024HYPCを確保することで、親ノードを運営できます。この親ノードは、ネットワーク貢献スコアの要件が満たされれば、多数の子ノードをサポートでき、親ノードと子ノードの両方から報酬を受け取ることができます。 ネットワーク貢献度のスコアを向上させることで、ユーザーは同じバンドルで最大1,024のノードを運用できます。

多次元トークンHYPMC

HyperCycleは、ネイティブトークンであるHYPCを持ち、ネットワークを維持するためのノード報酬はHYPCで支払われます。一方、トランザクション手数料は、HYPMC(HyperCycle Multidimensional Currency)と呼ばれる多次元トークンを使用しています。HYPMCはTODAアセットモデルを活用しており、HYPC、AGIX、ADAを含むことができます。HYPMCは、異なる配分を持つ複数のコンポーネントから構成されることができます。

以下、HYPMCトークンにおける3つのアセットの役割について説明します。

  • HYPC:HyperCycleネットワークのノード報酬として支払われるネイティブトークンです。
  • AGIX: レピュテーションシステムを維持するために必要なAI機能を利用するための代価として支払われます。
  • ADA :HyperCycleネットワークの部分的なスナップショットの長期保存、及び預金ベースのセキュリティと紛争解決のためにCardanoネットワークを使用するための代価として支払われます。

HyperCycleで利用されるAGIXとHYPCは、Cardano Native Assetsで実装されているため、HYPMCトークンはPlutusのスマートコントラクトを介して簡単に管理できます。

HYPCトークンのコントラクトアドレス
HYPCトークンの配布構成

HYPCの総発行数は2,147,483,640 HYPCです。TGEには総発行数の20.89%にあたる44,865,516 HYPCが割り当てられ、初期の時価総額は4,617,455ドル(流動性含む)に設定されています。トークンの販売価格は、シードラウンドでは0.0332ドルから始まり、プライベート&コミュニティラウンドでは0.0555ドル、Vent Finance、Poolz Finance、Seedifyのローンチパッド(KOLsを含む)では0.085ドル、最終的な売り出し価格は0.1ドルになります。HyperCycleは、このTGEで8,165,590ドルを調達する予定です。

SingularityDAOによるコミュニティラウンドは、2023年5月1日に実施されます。総発行数の0.84%が割り当てられ、KYCに合格した適格参加者は、1HYPCあたり0.0555 USDTを支払うことでトークンを受け取ることができます。HYPCの配布には、2年間にわたるスマートコントラクトによる権利確定構造が導入されており、トークンの請求は5月8日12:00 UTCから可能になります。

その他の配分は、エコシステム&ネットワーク採用基金に28.73%、ネットワークインセンティブプールに22.0%、流動性リワードプールに20%、チーム&アドバイザーに15.0%、戦略的パートナーに5.75%、パブリック・ディストリビューションに0.75%が割り当てられます。HYPCは、Uniswap、PancakeSwap、MEXC Globalで購入することができます。

以下は、トークンの配布構成とリリーススケジュールです。

アロケーション 割合 TGE
アンロック
Cliff 総供給 権利確定の時期
エコシステム&
ネットワーク採用基金
28.73% 616,906,795 60ヶ月間で毎月放出
ネットワークインセンティブプール 22.0% 9 472,446,402 9ヶ月ロック後
51ヶ月間で毎月放出
流動性リワードプール 20.0% 2.0% 37,589,638 TGEで2%、59ヶ月間で毎月放出
チーム&アドバイザー 15.0% 6 322,122,5476ヶ月ロック後
24ヶ月間で毎月放出
戦略的パートナー 5.75% 6 123,480,310 6ヶ月ロック後
24ヶ月間で毎月放出
パブリック・ディストリビューション 0.75% 100.0% 16,106,127
(@0.1)
シードラウンド 2.95% 5.0% 6 63,400,254
(@0.0332)
TGEで5%、6ヶ月目から
24ヶ月間で毎日放出
プライベートラウンド3.46%5.0% 374,329,994
(@0.0553)
TGEで5%、3ヶ月目から
27ヶ月間で毎日放出
コミュニティラウンド
(SingularityDAO)
0.84%5.0% 18,018,018
(@0.0555)
TGEで10%、3ヶ月目から
21ヶ月間で毎日放出
ローンチパッド
(Vent Finance、Poolz Finance、Seedify)
0.38%10.0% 8,235,292
(@0.085)
TGEで10%、3ヶ月目から
21ヶ月間で毎日放出
KOLs 0.14%10.0% 2,941,176
(@0.085)
TGEで10%、3ヶ月目から
21ヶ月間で毎日放出
TGEによる調達額
リリーススケジュール

<随時情報は追加します>

カルダノステークプール【OBS】

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